ジョシュ・スパーリング「Summertime」展覧会レポート

Text : Daiki Tajiri, Photograph : Guillaume Ziccarelli (Top), Kei Okano (Exhibition images).

Courtesy of the artist and Perrotin.

独自の手法を開拓し、二次元と三次元の世界を行き来する空間を生み出すニューヨーク出身のアーティスト、ジョシュ・スパーリング。彼による日本で初めての個展「Summertime」が東京・六本木にあるペロタン東京にて8月10日(土)まで開催中だ。

コンテンポラリーアートの歴史を振り返った時、多様なジャンルや手法を融合させ独自の表現方法を生み出した作家は多く存在するが、彼もまた彼自身が生み出したプロセスで全く新しい世界を示している。

幼少期からアーティストである祖父や父がいる家庭の中で育ち、カウズ・スタジオ(KAWS STUDIO)でのアシスタントをはじめ、グラフィックデザイナーやペインターの時期を経て、現在のスタイルに行き着いたというジョシュ・スパーリング。美術に対する広い視野と多岐に渡るキャリアにより培ったスキルや知恵から生まれた彼の作品は、平面と立体の狭間に存在するような形式をしている。彼の生み出す作品群に包まれ、インスタレーション空間と化すギャラリーに足を踏み入れた時、我々は今までにない視覚体験を味わうと共に、彼の持つカラフルでユニークな世界観に引き込まれる。

特に“スクイグル(くねった線)”を用いた、本展覧会のタイトルにもなっている《Summertime》シリーズをみると、彼の制作スタイルが今まであるような抽象作品とは少し異なるものだと理解できる。オリジナルの色彩レシピで描かれた様々な形をしたシェイプド・キャンバスは、単体の作品ではなくギャラリー空間の一部である壁を構成する、一種の建築的なパーツとして成り立っている。つまり、この作品はペロタン東京のギャラリー空間で展示されることによって初めて完成されるのだ。

また、彼の制作プロセスの中には、コンピューターを用いたソフトウェア処理やハイテク自動ルータ(くり抜き機)の使用が含まれていることも興味深い。精密に設計が含まれる制作過程は、シンプルな線と図形を組み合わせていることも相まって、工業的な製造を彷彿とし、メディアアートやポスト・インターネット的な潮流も垣間見える。

このように、ミニマルな要素を組み立てることにより誕生する彼の作品は、本人が語る80年代のデザイングループ「メンフィス・グループ」からのインスピレーション以外にも、オプアートやポップアートなど戦後の美術史を発展させてきた様々な潮流を視野に入れていることが確認できる。しかし、そこにデジタルを駆使する要素が介入することによって、彼の作品と対峙した時、まるで現代版に洗練されたファウンド・オブジェをみているかのごとく、新しい芸術への解釈の仕方を我々は教えられるのである。

つまり、作家自身の中にあるイマジネーションをアウトプットするにあたって、多数のジャンルや歴史を超越し表現する彼のスタイルは、過去にあった様々な芸術の系譜の上に、現代でしか成し遂げることのできないテクノロジーの力を注入することによって、我々が未だかつて見たことのない新鮮なビジュアルを作り出すことに成功しているのだ。

近年、作品が高く評価されルイ・ヴィトン財団に所蔵。その名を世界中のアート業界に広め、着実に自身のアートキャリア築いているジョシュ・スパーリング。国内初個展という貴重な場でもある本展覧会をはじめ、彼の今後の活動も注目したい。

ジョシュ・ スパーリング 「Summertime」
会期:2019年7月3日(水)- 8月10日(土)
休館日:月曜・日曜・祝祭日
会場:ペロタン東京   東京都港区六本木6-6-9ピラミデビル1F
営業時間: 11:00 – 19:00
入館料:無料

HP : https://www.perrotin.com

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