「Midnight / 0時」 dir : Jo Motoyo

映像ディレクター、Jo Motoyo インタビュー

interview and text : daiki tajiri

東京を拠点に活動する、若手映像ディレクターJo Motoyo。2019年3月に開催されたアジア最大級の広告祭「アジア太平洋広告祭(通称、ADFEST)」内で行われるコンペティション「Fabulous Five(ファビュラス・ファイブ)」にて、彼女が監督したショートフィルム「Midnight / 0時」が観客賞を受賞。さらに同年6月にフランス・カンヌで行われた世界規模の広告祭「カンヌライオンズ2019」に付随して行われる「Young Director Award 2019」短編フィルム部門にて、日本人女性で初となる受賞でシルバーを獲得。独自の着眼点で世界観を生み出す彼女の作品は、現在国際的な広告シーンで多くの注目を集めている。

普段は東京・原宿にあるクリエイティブラボ「TOKYO」にてCMなどの映像ディレクターやフォトグラファーとして活躍し、それと並行し個人の作家活動としてアーティストグループBESSOに所属するなど、映像を中心とした作品を意欲的に制作しているJo Motoyo。今回、彼女に作品を生み出すプロセス、表現に対するマインドを尋ねた。

「Midnight / 0時」 dir : Jo Motoyo

コミュニケーションすることを諦めないようにしています

「年を重ねるにつれて自分の好き嫌いが明確になってきて、無意識に苦手なものを避けるようになっていってるなって自分でも思うんです。でもそうしているうちに、知らない間に自分の小さな殻に閉じこもってしまうのが怖い。だから、自分と正反対の意見の方が居ても、出来るだけコミュニケーションを諦めないようにしています。もし、その結果私の考えが受け入れられなかったとしても、ディスカッションをした、ということが大事なのだと思っています。」

結論よりも伝えるという行為自体を優先させる彼女の考えは、結論を見出さなければいけないという思考が優先されがちな現代では新鮮に映る。提示するというアクションにより発生する、豊かで含蓄ある発見の存在に我々は気づかされるのだ。

いま支持されている”スタンダード”を理解するように心がけている

コミュニケーションを重要視する意志以外にも、彼女の制作活動のプロセスに注目したとき、興味深い要素を見出すことができる。

「制作を行うときは、日本のスタンダードとグローバルスタンダードを理解してから制作するように心がけています。例えば、映画や本など自分の好き嫌い問わず、注目されていたり人気な作品にはなるべく目を通すようにしていて、同時代に生きる人たちが何を支持しているのか知った上で、それに対して自分がどうアプローチ出来るかを考えて、物を作るように心がけています。そういったことを頭で考えながら作ったりもしますが、逆に自分から前触れもなく出てきたイメージみたいなものから生まれる、衝動的なアイデアももちろんあって、そういう時に生まれたアイデアはBESSOなど、個人で行う制作で昇華するようにしています。」

彼女の所属するアーティストグループBESSOで発表している写真や詩を用いたインスタレーション作品に注目すると、彼女が監督するショートフィルムやCMとはまた異なったパーソナルな側面を受け取ることができる。

「映像制作は一人で行うのが難しいので、たくさんの人の力を借りる必要があって、そのためにはまず一緒に作ってくれるスタッフさんの心を動かすアイデアでないといけないと私は思っています。反面で、そこまで多くの人を巻き込むまでには至らないようなアイデアでも、自分にとって興味があって大切にしたいものはもちろんある。アイデアをひとまず形にすることで別の発見があるので、すごく重要なプロセスだなといつも思っています。」

頭の中に数多く存在するイメージ。それらに相応しい表現媒体を選び制作を行う彼女のスタイルは、個人が見出すクリエイティブの可能性も感じ取る事ができる。

自由に表現ができる環境をつくりたい

では、制作にあたっていま支持されている”スタンダード”に対する彼女の立ち位置は何を指すのだろうか。
「自分の立ち位置というのは年齢、性別、国籍など自分で逃れられない事実から生まれるものだと思っています。どんな人も、変えようのないバックグラウンドを持って生きている。けれども、その中で自分が出来る最大限のことをして、国籍や性別といったバックグラウンドを負担と思うことなく自由に表現ができる環境ができればいいと思ってます。」

今後の展望

「今後は長編映画に挑戦していきたいなって思っています。母の実家がある台湾の田舎で、穏やかで平凡で、それでいて劇的な日常のお話を描いてみたいです。あとはミュージックビデオとか、英語でショートフィルムも制作してみたいと思っているので、それらは直近でやりたいことリストに入っていたりします。」

彼女の作品をみていると、人間の持つ楽観の内部にある悲観、放たれる光とそこから生み出される影の存在に気付かされる時がある。ショートフィルム「Midnight / 0時」もまた同じく、生きることと表裏一体である「死」、その中でも特に負の複合体とも言える「自殺」という要素を用いて彼女独自の世界観を広げている。しかし、彼女はそれ自体を通り一遍に否定するのではなく、「死」への一般的なネガティブイメージに対する疑問を我々に提示する。映像をはじめとした様々な表現手法を通して、彼女自身が伝えたい思考がダイレクトに込められてるのがみて取れるのだ。

時代をリードする新しい価値観は、彼女のように強いマインドを持ち、コミュニケーションを取ろうとする存在があるからこそ生まれるものだと今回のインタビューで感じる事ができた。今後も引き続き制作活動の幅を広げ、映画制作も挑戦したいと語る彼女。映像ディレクターJo Motoyoの活動にこれからも注目していきたい。

Jo Motoyo
映像ディレクター/フォトグラファー/コピーライターとして活躍するクリエイター。
日本人離れした画作りや脚本制作に定評がある。日本語、英語、中国語を話す。
Young Director Award Short Film部門シルバー受賞、Adfest Fabulous Fiveにて観客賞を受賞。
最新作では、Netflix/『全裸監督』プロモーション映像(https://youtu.be/01mJaa4KSGw)などを手がける。

http://lab.tokyo.jp/creative/motoyo-jo-uzawa/

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