Javier Martin 個展「INFINITE LIGHT」レポート

text : daiki tajiri

現在進行形の世界的にみられる文化背景を独自のフィルターにかけ、美の価値を改めて考え作品に落とし込むスペイン出身のアーティスト、Javier Martin(ハビエル・マーティン)。彼による日本で初めての個展「INFINITE LIGHT」が多角的な視野でユニークな展示を行なってきた表参道のギャラリー、MASAHIRO MAKI GALLERYにて11月2日(土)まで開催中だ。

Javier Martin, Blindness Infinite Light, 2019, oil,  acrylic, collage and neon light on wood, 200.0×200.0x5.0cm

幼少期より油絵をはじめ、その後も独学で自身の表現活動を拡張してきたハビエル・マーティン。本展覧会では彼の代表作である2007年より取り組み続けている「Blindness」シリーズの展示と合わせ、本展に合わせて制作された新作、さらには鑑賞者参加型の作品も展示されている。現代カルチャーが持つ影を照らすように生み出された彼の作品群は、鑑賞者に美術表現の新しい視野を与える。

絵の具やポスター、写真、ネオンなど、彼の作品では多様なメディウムが用いられ、それらで構成されるコラージュ作品は、作家によるコンセプチュアルな思想によってまとめられる。メディアや広告などを飾る女性モデルやブランドロゴ、アクセサリー、時には紙幣。我々の概念として存在する美のアイコンが作家の持つ世界観を通すことにより本来ある意味合いから切り離され、我々の身近にある物やサービスの商業的イメージ、日々溢れ出す情報、SNSによるインターネット・ミームなど、現在多くの人々が抱え共有する意識と連結される。それらは、彼のスタイルを通しアイロニカルな側面を持つ美しきカオスへと変貌するのだ。

 Javier Martin, Blindness A Beauty of The Southern Quarter, 2019, oil, acrylic, collage and neon light on wood, 129.5×129.5×8.0cm

特に彼の作品群の中でも、2011年より取り組み始めたというネオンを用いた作品は、我々に強い印象を与えるに違いない。特に日本国内でネオンサインなどのネオンを用いた表現は、LEDの流通などが原因で70年代からのバブル全盛時代から比べると、その業界規模は衰退され制作自体が困難になっていることもあり、純粋に新鮮な表現手法として見受けることができるだろう。

また、彼の生み出す作品群は前述したネオンの導入など、常に作家の思想とその時の文化背景に合わせ進化してきたが、本展覧会ではまた新たな次元へと展開させているのは示唆に富むポイントではないだろうか。目まぐるしく流れていく情報が支配する現代に同期した上で自身の解釈を示す姿は、多様化する現代美術というアートフォームで非常に重要なスタンスだ。つまり、彼の作品からは表面上のクールなビジュアルや斬新な技法を用いた制作だけでなく、その作品をなぜ今現在制作するのか、もしくは発表するのか、その意味を自身で把握した上でアイデアを視覚化しているように考察できる。

Javier Martin, Cut simply, 2014, cut photo paper on plexiglass, 120.0×93.0x4.0cm

彼の代表作である「盲目」を意味する「Blindness」シリーズに注目したとき、彼の持つ制作スタイルを読み取ることができるだろう。本展覧会で展示された新作は大衆の美的価値観を見直すマインドを引き継ぎながら、今までコラージュで用いられていた現代人の欲望や願望の象徴を意味する商業的イメージと、我々の根源的であり純粋な意志を2つの輝く輪とし、それらが交わり純粋な意志が商業的イメージに飲み込まれ、ひとつの輪に変化する様相を「Infinite(永遠)」という概念として進化させた。彼の捉えるそのディストピア的世界観の中で誕生した作品と向かい合ったとき、鑑賞者は「Blindness」だった自分自身と今いる世界に気づかされ、改めてその価値観を考えさせられるのだ。

Javier Martin, Blindness The Fickle Type, 2019, oil, acrylic, collage and neon light on wood, 170.0×127.0x8.0cm

今年の韓国・ソウル美術館での個展が成功するなど、国際的にも注目が集まるハビエル・マーティンの作品。彼の持つ世界観は、今回のMASAHIRO MAKI GALLERYの展示空間を活かしたキュレーションの元開かれた国内初の展覧会にて、日本の鑑賞者の目にはどの様に映るのだろうか。会場に実際に足を運び実物の作品と対面することを薦めたい。

Javier Martin(ハビエル・マーティン)

1985 年生まれ。スペイン、マルベーリャ出身。幼少の頃より油画を始め、8 歳で初の個展を開催。以降独学でアートの経験を積む。ヨーロッパ各国、韓国、香港、そしてアメリカを旅する中で研ぎ澄まされた観察眼は、ありふれた身の回りの事柄同士の記号論的な関係性を的確に拾い出し、マーティンの現在における創造性の基盤となる。近年の主な展示に、「Blindness」Valli Art Gallery(ニューヨーク、 2019 年)、「Plan B」David Zwirner Gallery(ニューヨーク、2019 年 )、「Convergence」Galerie Art District(パリ、2018年)、「LIES & LIGHT」ジャクソンヴィル現代美術館(ジャクソンヴィル、 2017 年)がある他、2019年4月にはマーティン初の美術館での個展「Blindness」がソウル美術館で 開催された。

展覧会インフォメーション
Javier Martin「INFINITE LIGHT」
2019年10月4日(金)- 11月2日(土)
※休館日:日曜、月曜
会場:MASAHIRO MAKI GALLERY
東京都渋谷区神宮前4-11-11
営業時間:11:30 – 19:00
入館料:無料
HP : https://www.makigallery.com/ja/exhibitions/

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